なんちゃって最終回

どうも、結局ボイドラ企画のサイトにリンクすらしてない無精者です。
こっちは久しぶりの更新だー。
以下は色々切羽詰ってた頃にストレス解消に書きなぐった文章です。
前後がどうしてそうなったのかは私にもわかりません、いきなり始まっていきなり終わります。
……推敲もしてないし、本気で勢いだけで書いたから晒さないつもりだったのですが。
時間経っても思いの外気に入ってたので載せたくなりました。
フェニックスはあらゆる理不尽に立ち向かう所が大好きなのです。




 不意に小さな、何かがひび割れたような音が響いた。
 それをきっかけにして十字剣の切っ先がアノドの最後の砦――幾重にも伸びた悪意の糸を断ち切って行く。
 正義の名を冠したつるぎが漆黒の中に眩く軌跡を残していく様は、さながら星が天を走ったかのようだった。
 つるぎが届く。かつて、伝説の英雄すら届かなかった間合いへ。
 見開かれたアノドの瞳に驚愕と恐怖が過ぎり――

 ――最期の時はいつまでも訪れなかった。

 『……情けをかけたつもりか』

 息すらできぬ静寂が落ちた中、アノドが嘲るように漏らした。
 フェニックスの剣は、闇を払う流星は、神の喉元に突きつけられたまま止まっていた。
 それは最期の一撃のはずだった。しかし、神を殺すはずだった刃は本当に――本当に、最後の一瞬で止められていた。
 ためらいではない。アノドの言うような憐憫などではない。
 フェニックスの瞳は凛と怒りに燃えたまま、怨敵の目を見据えたままだ。

 「ぼくを連れて行け」

 眉一つ動かさぬまま、静かなる怒りに震える声でフェニックスが口にした言葉の意味を、誰一人理解できなかった。
 その僅かな隙間。
 戦場の一瞬の空白を少年の赤銅色の瞳が射抜く。
 この戦争の中で幾度も見せた、その色の意味を察してティキが怒鳴り声を上げるより早く、フェニックスは続きを告げる。

 「お前にも、勝ちたい戦があったんだろう。ぼくをそこへ連れて行け」
 『……。……何の、つもりだ』

 少年の瞳には依然怒りが宿っていた。生命の枠に囚われぬものですら明確に見分けられる程の、憤怒。
 間違っても目の前の相手を許した者の目ではないそれらと、フェニックスの言葉はあまりに乖離しているように感じられたのだろう。
 再度、問いかけを行ったアノドの声からは、極僅かにだが悪意が弱まっていた。
 その隙間をこじ開けるようにフェニックスが吐息を零す。

 「ぼくはお前を許さない。絶対に、絶対に許せない。
  それでも――…お前にも守りたいものがあったんだろう。
  なら……なら、ぼくはすべて守る! お前の守りたかったものも、お前の同属が守りたかった何もかも!」
 『下らぬ……。妄言とすら呼ぶ価値の無い誓いだ』
 「なら、ここでぼくに斬られるか!?」
 『――っ!?』

 フェニックスの瞳が怒りの余り赤銅――否、あらゆる物を溶かす、炎の赤に染まる。
 すべて救わせるか、ここで果てるか。理屈の形を成す気すらない、無茶苦茶な選択肢だ。
 そんなもの、ここにいる誰もが理解している。
 
 「選べ! ぼくに斬られて終わるのか!?
  ――ぼくはお前を許さない……絶対に許せなんかしない!
  絶対に、絶対にお前のためなんかじゃない! これは――ぼくが決めたんだ!」

 ――けれど、それがフェニックスなのだ。そしてそれも、すでに誰しもが理解していた。
 怒りと悔しさに、己が奪われた物の大きさに、目の前の敵の心根に、これから誰かが失うかもしれない物のために。
 神ですら穿つ剣を持ちながら、あらゆる理不尽に憤り、涙を流しながら尚戦う――それが、大聖フェニックスだ。
 大天使を動かすのは理想や大義などではない。そんな理論立てたものではない。
 もっと矛盾を内包していて、誰かに肯定や共感を求めるような類ではないのだ。効率や理想を省いた、究極の意思の形。
 ただ、己の感じるままに。単純にして明快、理不尽故の強さ。
 それが――きっと、心と言うものなのだから。

 「……ったく。てめぇは本当に最後まで……道中、文句を言わせてもらうからな、マジで」

 肺に溜まった息をすべて吐き出す勢いで、ティキが大きくため息をつく。
 それを皮切りに各々、必要な物資だの、残してきた裁定の処理についてだの、好き放題会話し始める。
 そう、誰しも知っているのだ。
 こうなったら、自分たちは付き合うしか少年と共に在る道はないことを。

 『正気か……!?』
 「まー、アンタの気持ちはわかるけど。フェニックスだからねえ、そんなもんよ」
 「だねえ、兄ちゃんだもんな。カミサマでも絡まれた相手が悪かったよなぁ」
 
 混乱したアノドの声に、マリアが解けて乱れた赤髪を整えながら答える。
 相槌を打ちながらアスカは持って帰れそうな物資を探す方へすでに意識が向かっている。
 サラジンが剣の先を星の欠片に突き刺して心底重たいものを背負わされたとばかりに肩を落とす傍ら、メイジャスとミノスが互いを労わる視線を交わす。
 皆、戦の終わりの空気を纏いながら、同時に新たな戦に備えた顔をしていた。
 許せたわけではない。この場にいる誰もが心の拠り所を超聖神に奪われている。
 己一人ならば誰しも自分が討ちに行っていただろう。
 けれど、そうしたが最後、口論の相手は絶対に斬れない味方になるのだ。
 それが……少年の気持ちがわかっているから、大小はあれど自らも共感してしまったから。
 心の底から面倒くさいと思いながらも、もう、やるしかないのだ。
 呆然と佇むアノドから害意が完全に抜け落ちたのを感じ、フェニックスは剣を引き、頬を伝う涙を拭い――振り返って仲間のもとへと飛び立つ。
 ぼろぼろの翼はそれでも、闇夜の中で白く燦然と瞬いていた。
 
[PR]

by urihito | 2016-07-07 07:07 | 文章・その他
line

のりたま瓜人と、ひとみと。スーパービックリマン中心に落書きしたり呟いたり。本館へはリンクから行けます。


by urihito
line